大熊千晶 – TRIGGER

大熊千晶

本業は、中学校で勤務する栄養士。毎日の給食に関する事務作業や管理を行う。
そして、彼女は、本業とは別に様々な活動に従事する。今よりもっと成長した自分になりたい。
それが、彼女の原動力。

素直

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成長したくて

彼女は現在、都内の中学校で働く栄養士だ。
勤務する中学校の給食管理を主業務として行うという。

給食を校内で作る学校には、調理師はたくさんいても、
栄養士は通常、一人しかいない。

その一人が彼女なのだ。

給食の発注や経費の計算をすることもあれば、
業者に発注をして、多数いる調理師の統括を行う。

また、給食ができれば最初に味見をして、
最終的なOKを出すのが彼女の仕事。

彼女のOKがなければ、給食は提供されない。
そんな栄養士として責任あるポジションだ。

彼女が今の職業に就いたのは、数ヶ月前のこと。
栄養士の仕事とは逆に、給食調理の現場で働いていたという。

給食調理の現場が嫌になって
転職をしたのかというとそうではない。

調理は自分の力で料理を美味しく作ることができるし、
それに伴う、タイムマネジメントや配置転換なども楽しかった。

そして、前職では、若くしてチーフまで担当した。

そのまま働き続けていれば、調理を離れ、
本社でスーパーバイザーとして活躍する道もあったという。

慣れ親しんだ職場の仲間、築きあげた実績。
しかし、彼女はそれでも転職を選択した。

「今よりも成長したかったから」
転職の理由を彼女はそう答える。

彼女の一歩目。
それは、自分の可能性に気づいた時に訪れる。

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現状維持で大満足

転職を決意した理由を、
自身の成長を考えてのことだと彼女は話した。

昔から向上心が高かったのか?
しかし、それは全く違うという。

昔の自分が今の自分をもし知ったのだとしたら、
「え、そこからなにがあったの?」
と問いたくなるはずだという。

数年前の自分は、現状維持で大満足。
影に隠れて、淡々とした日々を歩むことが大好きだった。

栄養士になったのも成り行き。
何か資格を取った方が生きやすいかも。

そんな気持ちで管理栄養士の資格が取れる大学を選んだし、
流れに身を任せて資格も取ってみたという。

そして、周りが就職先を考え始めると、
自分自身もその流れに乗るようにして、
給食調理の職場に就くことを決めたのだという。

別に自分のやりたいこともなかったし、
何かを考えることも面倒臭い。

朝早くから職場に出勤し、給食調理をする。
仕事は16時に終わって、そのままヨガにいく。

帰ってお風呂に入って、ご飯を食べて。
毎日の楽しみはテレビの連続ドラマ。

電波で送られてくる仮想世界に一喜一憂していた。

この淡々とした日々こそが幸せだと思っていた。
成長する日々なんてくだらないな、と思っていた。

だから、今とは正反対の生き方と考え方だったという。

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恋愛願望

現状維持で大満足。

彼女がここからどのようにして
成長のために転職を決意することができるのか。

実は、そんな彼女を変えたきっかけは、
恋愛願望と、それを理由に加入した社会人団体だったという。

家と会社とヨガ教室を往復する日々を
繰り返した23歳の頃。

彼女の中でフツフツと生まれてきた不安。

それは、”このままで私は結婚できるのか?”
という将来への危機感だった。

仕事現場には年が離れたおじさんやおばさん。
若い人なんていないし、大学時代の友人たちとも疎遠になっていた。

やばい、このままじゃやばい。
テレビの中の仮想世界に憧れを抱いている場合じゃない。

そんな時だ。

数少ない大学時代の友人が誘ってくれて
実現した年明けの初詣。

そこで友人は近況を教えてくれたという。

大勢の知人たちとワイワイと年末を過ごしたこと。
仲間と共に社会人としてのスキルアップ講座に参加していること。
若者だけが集まるイベントに参加したりしていること。

さらに、詳しく聞けば、友人はある社会人団体に所属し、
そこで出会った仲間と共に成長や交流をしているようだった。

「え、なにそれ!? 私もやりたい!」
思わず彼女はそう友人に伝えていたという。

今の日常から抜け出して、面白いことができるかもしれない。
家と会社とヨガ教室に新しい環境ができるかもしれない。

しかし、それ以上に彼女が抱いた期待は、
”彼氏ができるかもしれない”という想い。

彼女はそうして、社会人団体への加入を決意する。

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早く辞めたい

しかし、社会人団体に所属してすぐのことだった。
彼氏ができたのだ。

それは社会人団体とは全く関係ない人。

彼女は悩んだ。
恋愛をしたいという願望は満たされてしまった。

でも、社会人団体には入ったばかり。
彼氏ができたから辞めますとは、言い辛い。

だから、彼女は、とりあえず続けることにしたという。

その社会人団体では、様々な講座が行われた。

着物の着付け教室や冠婚葬祭のマナー教室もあれば、
縄文ストレッチやマジックセミナーなんてものもある。

彼女は、本業の給食調理の傍で、
仕事後や休日はそんな活動に参加し始めた。

当初、その全てに消極的だったという。

元から自分は現状維持で大満足なのだ。
仕事と関係ないことを学んで、なんの意味があるのか。

それに、成長とかリーダーシップとか
頑張るとか一生懸命になるとか、本当に嫌いなことだった。

頑張っている人間なんてカッコ悪いとしか
思ったことなかった。

続ける意味を考え始めれば、そこに浮かび上がる答えなどはなく、
だから、早く辞めてしまいたいと思った。

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環境の変化

しかし、それでも続けたある日のこと。
彼女は自身の中である変化が生まれるのを感じた。

社会人団体での講座にはクラスがあり、
それごとに昇級テストがあり、受かった時に素直に
嬉しいという気持ちが沸き起こったのだという。

彼女は初め、自身で感じたその気持ちが
不思議でしょうがなかった。

あれだけ現状維持でいいと思っていた。
なんで成長するために頑張るかなんてわからなかった。

しかし、それでも自分の中で確かに感じる
成長することの喜び。

彼女は、今まで嫌々にやっていた社会人団体での活動も、
次第に行ってもいいかなと思い始め、
そして、行きたいなと思うようになり始める。

その環境に集まる周りのメンバーも
彼女の中に新しい価値観を吹き込んでいく。

その社会人団体には、給食調理の本業だけでは、
決して出会わない同年代の人たちがたくさんいた。

彼らと共に講座に参加するうちに、
彼女は彼らがなぜ参加するのかを知るようになる。

”今よりも成長したい”
みんなその想いで講座に参加していたのだ。

あれ、そうか。今の私と同じだ。
そう思った。

給食調理の仕事は続けた。
彼氏とも上手くいっていた。

でも、”おかしいな”と思った。

別に社会人団体をそろそろ辞めてもいい頃なのに、
なぜか辞めようとしない自分がいたのだ。

ふと周りを見渡せば、
そこには新しい環境で出会った仲間がいた。

ふと自分の生活を見返せば、
インストラクターや講師の資格を取ろうと頑張る毎日があった。

淡々とした日常を望む自分はどこにもいなくて、
新しいことに出会える日々にワクワクしていた。

成長を繰り返す日々を望んでいる自分がいた。

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素直

成長することの喜び。

それを感じた彼女は、次第に本業の
給食調理でも成長を感じたいと願い始める。

それが転職という成長の方法だった。

調理の仕事だけではなく、もっと大局的に
調理現場を見ていきたいと思った。

それは、調理ではなく栄養士の仕事だった。

さすがに転職は悩んだ。
今まで築き上げた地位や実績を捨て去ることになるからだ。

しかし、過去の自分を振り返った時、
さすがにここで転職はしないだろうな、と思った。

だから、彼女は転職を決意したのだという。

社会人団体での活動が、自分に自信を与えた。
だからこそ、成長のためにさらに一歩踏み出せた。

ここまできて彼女はようやく自分のことがわかったという。

過去の自分は影に隠れて生きていきたいと思っていた。
それは、自分自身に対して全くの自信が持てなかったから。

淡々とした日常や現状維持の日々に大満足だったのは、
きっと変わりたいと思う気持ちを押し殺していたから。

周りの人たちの本気の努力をかっこ悪いと思っていたのは、
自分が本気になることが怖かったから。

変わることが怖かったから。

でも、心のどこかで本当の自分は知っていたんだ。
本当の自分は、本気で頑張れるものを見つけたかったことを。

淡々とした日々から抜け出したいと思っていた。
変わりたいと思っていた。

だから、彼女は今がとても嬉しい。

本業以外の環境が自分を素直にしてくれた。
これからも自分に素直にありたいと思う。

今日も彼女は成長していく。

一歩、また一歩。
歩み続けていくことで成長していく。

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この記事を書いた人

宮本 伸男
宮本 伸男ライターであり総監督でもある
人狼が大好きです。
ゲームマスターならお任せください。

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