村田 源 – TRIGGER

村田 源

彼の職業は公園管理人。植物などの保全を行う一方でこども達を通じて自然の大切さを伝えていく。
そして、彼にはもう一つ、ビオトープ管理士という肩書きがある。彼が見ているのは100年後の地球だ。

100年後の地球

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自然を必要としているのは

彼の職業は、公園管理人だ。

自治体から公園管理の委託を請け、
遊具のメンテナンスや草木の維持管理を行う。

彼が担当するのは、主にお台場の公園だ。
毎日たくさんの人が訪れる。

遊びに来る子ども達、休憩中のサラリーマン、
主婦の井戸端会議に、トイレに立ち寄る人もいる。

目立つ仕事ではない。
縁の下の力持ちのような仕事だ。

それでも、様々な人の心が休まり、
楽しめる場所を創ることが彼のやりがいだという。

そして、彼にはもう一つのやりがいと使命がある。

公園では環境に関するイベントや教室が開かれる。

彼はそこで子どもたちに自然環境の大切さについて
伝えていく活動をしているという。

公園にはたくさんの草木、花、自然がある。
その自然を通じて、少しでも環境について知ってもらいたい。
自然環境に意識を向け、理解をしてもらいたい。

そのために、パラレルキャリアとして
休日は環境に関するセミナーやイベントに積極的に参加し、
自分自身の知識を深めているという。

なぜ、彼はそこまで自然と向き合い、人々に伝えていくのか。

”地球は人間がいなくなって困るわけではない。
人間が自然を必要としているんです”

自分の使命は、100年後の地球のために、
多くの人に自然環境について伝えていくこと。

彼には熱い想いがある。
お金をたくさん稼げるわけじゃない。

でも、自分のやるべきことがわかっている。
それは何物にも代えがたい財産だ。

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ゴルフ

環境保全活動をずっと行ってきたのか?

それは違う。

彼が自然環境の保全活動を始めたのは、
社会人5年目の頃だったという。

以前はゴルフ場で芝や環境整備の仕事をしていた。

大学の畜産学部で緑化管理を学び、
それを実践に移すために選んだ仕事。

しかし、働けば働くほど違和感を覚えていったという。

ゴルフ場はビジネスであり、収益が第一。
いかにゴルフ場として機能するか。
いかにお客を集めることができるか。

ゴルフ場自体の景気は悪く、売り上げは年々減少し、
ゴルフ場オーナーの意向に振り回される日々。

自分が本当にやりたかったことは、こんな仕事なのだろうか。

いつからか、彼は働きながらそんなことを思い始めた。

そんな時に、彼の視界に入ったのは、
自分が整備した芝が広がった綺麗な光景だったという。

山々、木々、草花。
自然に囲まれたこの空間。

やっぱ自然っていいよな。
そう思った。

自分のモヤモヤも将来への不安も
そんな自然に触れていると心が安らんだ。

自然についてもう少し学んでみようかな。
彼が抱いたのはそんなことだった。

元から自然や動物が好きで大学に進んだのだ。

大学でも、基本的なことなどは学んでいた。
でも、今だからこそもう一度自分の力で調べてみよう。

そうして、彼は仕事の傍らで、パラレルキャリアとして
様々なセミナーに参加し始める。

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真実の地球

自然について調べてみよう。

そう思い立ち、彼が初めて参加したのは、
自然環境保全に関する団体のセミナーだった。

このセミナーが彼の人生の転機となる。

セミナーでは様々なことが話され、
その全てに衝撃を受けた。

酸素量と二酸化炭素量のバランス。
デング熱と温暖化、富士山の世界遺産問題、
狼の絶滅と生態系崩壊の事実。

そして、止まることを知らない自然環境破壊。

表面的な大学の講義とは全然違う。

想像以上の自然破壊と
真実の地球がそこにはあった。

そして、このままの状態が進めば、
人間は勝手に絶滅し、自然は残り、地球は回る。

地球や自然はなんのためにあるのか。
それは、人間のためにあるのではない。

人間が自然を必要としているのだ。
もっと多くの人がそのことに気づかなければならない。

その日から、彼は環境保全活動に携わりたいと
強く願うようになる。

今のゴルフ場の仕事とパラレルキャリアだけではなく、
もっともっと自然環境保全に従事したい。

そうして、彼はゴルフ場の仕事を辞めることを決意した。

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100年後の地球

仕事を辞めてから、彼はアルバイトや契約社員で
環境整備の仕事をしながら自然環境に関する勉学に励んだ。

eco検定やビオトープ管理士という
環境に関する資格も取得した。

しかし、学べば学ぶほど、ある虚無感を抱く。

それは、自分だけが知識を増やしても
自然破壊は猛烈なスピードで進んでいくということ。

壊された自然はもう戻らないのだ。

狼は自然破壊により100年前に絶滅した。

そして、生態系が崩れた現在、鹿や猪が増え、新芽を食べてしまい
自然が育たないところはたくさんある。

人類にとっての100年後の地球。
それは、当たり前にはやってこない。

今だ。

今、人類の環境に対する行動を変えていかないと、
100年後の地球は守れない。

しかし、個人の活動では限界がある。
どのように動いていけばいいのだろう。

だから、彼はそんな虚無感とジレンマに悩んでいたという。

そんな時に出会ったのが、
日本生態系協会が企画したドイツへの視察ツアーだった。

参加することで何かつかめるかもしれない。

そんな思いで参加を決めたという。
そして、そのツアーは彼に様々なヒントを与えることになる。

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ここから。

訪れたのはドイツ郊外にあるビオトープ。

ビオトープとは、野生生物が生活できるように
造成、復元された小規模な生息空間のこと。

人工的に作られた自然環境の中には、
トンネルがあったり、茂みがあったり、池があったり。

彼は驚いた。

その自然を相手にして、現地の子ども達が
実に楽しそうに遊んでいたという。

そのビオトープは、教育の一環として作られたもの。

幼い頃から自然と触れ合うことで、協調性を生み、
危機意識も持たせることができるという。

そうか、と思った。

小さな活動だけでは、自然環境破壊には追いつかない。
人々の自然に対する意識を変えていく必要があるのだ。

子ども達が幼い頃から自然と触れ合える環境があれば、
自然に対する考えが根付くし、自然が好きになるかもしれない。

自然環境保護は、子ども達から始まるのかもしれない。

そして、帰国後、
彼は現在の公園管理の仕事に就く。

公園ではイベントがあり、環境教育の場があった。
そして、草花の管理も仕事の一つだった。

自分には実績はまだない。

でも、子どもを通じて、自然環境について伝えていくことはできる。

100年後の地球。

ここから。
まずは、ここから。

彼の職業。

それは公園管理人。

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この記事を書いた人

宮本 伸男
宮本 伸男ライターであり総監督でもある
人狼が大好きです。
ゲームマスターならお任せください。

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