宮川あつみ – TRIGGER

宮川あつみ

彼女は、とあるベンチャー企業で働く22歳だ。
現在は主に高齢者や身体障害者でも可能な通販事業に関する運営に携わる。
夢を探すことが夢。無理矢理作り出した夢には価値がないことを彼女は知っている。

会いたいと思われる人に

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夢を探すことが夢

彼女は、とあるベンチャー会社で働く22歳だ。
その中でも事業の一つである通販事業サービスの運営を担当する。

提供先は、外出がなかなかできない
高齢者や身体障害者、妊婦さん等。

自社で展開する通販サービスを使うことで
自宅でも収入を得ることができるように提案をする。

入社1年目の彼女。
日々、学びと実践を繰り返しているという。

夢は何?
彼女にそう問いかけると、首を横に振ってみせた。

「夢はまだないです。今は、夢を探すことが夢なんです。」

夢がないことは悪いことではない。
むしろ、彼女にとってはそれこそが志になっている。

夢は知識。
色々なことを学べばやりたいことが見えてくる。

だからこそ、今の自分は様々なことにチャレンジする。
やりたいことを見付けた時にかなえられる人間になるために。
様々なことを学び、様々な人に出会うのだ。

彼女はそう信じ、毎日を楽しく生きて行く。

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使命と義務

夢を探すことが夢。
彼女の中で確立されたその考え。

しかし、実は数年前まではそんな彼女も
大きなコンプレックスを抱えて生きていたという。

そのコンプレックスは、”夢がないこと”
今とは正反対の考えだ。

むしろ、夢は自分で持ってもいいものだと
考えることもしなかったという。

無難に、失敗しないように。
まわりに認められるような道を選ぼうとしていた。

そう考えるようになったのは、彼女の環境が関係していた。

彼女の生まれは、長野県の旧戸隠村。

電車も信号もコンビニもない。
自然豊かで、とても大好きな故郷。

しかし、過疎地域に指定されているほど人口は少ない等、
深刻な問題を抱えている。

家族は、両親に二人の姉。
そして、祖母を合わせた6人。

高校を卒業し、大学に入学するまでの間を
緑に囲まれた自然豊かなその土地で過ごした。

彼女には将来なろうと思っている職業があったという。

それは、小学校の先生。

幼いころに「公務員は良い」と大人が言っているのをみて

ある時、思い付きのまま「公務員になりたい」と
口に出した時に

周りの大人が「すごい」「えらい」と褒めてくれたことが
最初のきっかけだったという。

気付いた時には
自分は公務員になるものだ、と思っていたという。

大学受験シーズンになり、
自分の進路と向き合い

小学校時代が楽しかった、という理由で
「小学校の先生」に決めた。

「今思えば、そもそも、どんな職業があるのかも分からず
選択肢を知らなかった。」

と彼女は語る。

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小学校の先生

小学校の先生になるために選んだ都内の大学。
家族も親戚もみんなが喜んでくれていた。

しかし、彼女はこの頃から自分の進路に悩み始めたという。

出会う人、出会う人に
「どうして先生になりたいと思ったの?」と聞かれたからだ。

地元で働けて、安定だから、なんて
なんとなく恥ずかしくて言えなかった。

周りにいいね、と言われたくて
それらしい理由をつくっては、その場をしのいでいた。

しかし、2年目に入ってからたくさんの壁が
彼女に押し寄せた。

きっかけは、大学2年の時に始めた、
初めての教育現場のボランティア活動。

彼女が現場で楽しそうに子供と触れ合っていると、
かわいい顔した一人の男の子が近づいてきた。

「おいそこのくそばばぁ。どけよ。」

驚きすぎて、自分の思考が止まった。

彼女の母校は全校80名の小さな学校で
彼女の小学校のイメージ=母校、だったからだ。

彼女にはその出来事が強烈なほど印象に残ったという。

そして、
実践的な授業が増えていくにつれ
理想と現実のギャップに悩んだ。

子どもとうまく関われない自分。

先生が似合う、と言われていた彼女は
その事実を認めたくなかった。

頑張れと応援してくれた家族のためにも
負けるわけにもいかなかった。

頑張ろうと思っても空回りの繰り返し。

いつしか彼女の小学校の先生の夢は
「なりたいもの」ではなく「ならねばならないもの」といった
「義務」になりつつあった。

それでも彼女は、
自分に嘘をつき続けた。

なぜなら、
やりたいこともなければ、
就職に必要な勉強や資格なども
何も持っていない。

何よりも、
「先生にならない」ことの選択が
応援してくれた家族や友だち、先生への
裏切り行為なのではないかと感じていた。

社会に出るのが怖い。
社会人になりたくない。

とにかく逃げたい、それだけだった。

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夢は知識

そんな彼女に転機が訪れたのは、大学3年生の時。

仲良くさせていただいていた経営者の紹介で、
あるベンチャー企業の社長と
出会ったことがきっかけだった。

初めて見る「経営者」

その人はイキイキしていて、
とにかく楽しそうで
輝いて見えたという。

その経営者さんに、彼女は夢がないという悩みを打ち明けた。
その人はいった。

「そんなに何年後こうしてああして・・・って
言える人はほとんどいないよ、大人でも。

夢は知識だよ。
知識が広がればやりたいことも
いっぱい見えてくる。」

彼女の中に衝撃が走った。

今、無理して夢をつくらなくて良いということ。

自分を初めて、
受け入れられた気がした。

小学校の先生になるという夢。

その夢は、いつの間にか
重荷へと変わっていた。

できないことを認めることが怖かった。
好きな人達から嫌われるのが怖かった。
自分には何もなくなることが怖かった。

けど、夢は知識なのだ。
無理矢理に持つものではない。

私には夢がない。
だから、これから探していこう。

自分は様々なことに触れていこう。
様々なことを学んでいこう。

自分に夢がないことを自覚する。
それが、彼女の一歩目だった。

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会いたいと思われる人に

彼女は、今、その社長の元で働いている。
小学校の先生とは全く違う仕事。

しかし、そんな彼女にはなりたい自分があるという。

それは、会いたいと思われる人になること。

幸せだから笑うのではなく、
笑うから幸せになる。

そんなキッカケの一人でありたい。

常に元気チャージャーとして
会いたいと思われる自分でありたい。

そして、50歳の時には
沖縄で友人とゲストハウスをオープンする。

今はたくさんの人に
時間をかけて会いに行く。

でも50歳になる頃には
会いに来てもらえるような人になって
楽しくワイワイお酒を飲んで暮らしていきたい。

そう語る彼女は本当に楽しそうだ。

それが彼女の夢なのか?

しかし、彼女はやはりこう答えた。
「それは夢なんかじゃないですよ。”やること”なんです」

夢を探すことが夢。
それはいつしか彼女の志に変わっていた。

目の前の将来に悩む自分はもういない。
彼女は今、自由な発想と広大な世界を自分の中に持っている。

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この記事を書いた人

宮本 伸男
宮本 伸男ライターであり総監督でもある
人狼が大好きです。
ゲームマスターならお任せください。

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