安藤恭輔 – TRIGGER

安藤恭輔

彼には、2つのキャリアがある。それは、経営統括マネージャーとフリーディレクター。
一見、 異なる2つのキャリア。しかし、そこには彼だけの歩みと答えがある。

求められる人材になる

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2つの異なるキャリア

安藤恭輔。
彼の本業は、会社のマーケッターだ。

経営コンサルティングから資格検定やスクール、
アパレル企画やショップ運営など幅広いビジネスを展開する知人の会社。

その会社の各事業の経営統括を含めた
マーケティングとマネジメントを担当するという。

そして、彼にはもう一つのキャリアがある。
それは、フリーランスのディレクターだ。

写真や動画の撮影から、企画・編集も一人でこなす。

現在は企業から、プロモーション動画や
写真素材の提供など、さまざまな依頼を受けるという。

綺麗なものを綺麗に伝えるのは当たり前。

自分がやりたいのは、なんてことのない日常や人物の
その瞬間の魅力をいかに伝えるか。

そして、なによりも、自分が提供する動画や写真。
それを受け取るクライアントが笑顔になってくれるように。

そのことに真摯に向き合い、必死にやってきたという。

彼だけのオリジナルな視点と客観的に好まれる視点。
それらを器用に織り交ぜた彼の動画の完成度と評判は高い。

会社のマーケティングとフリーのディレクター。

それは、大きく異なる2つのキャリア。

しかし、彼は今後も会社のマーケティングに主軸を置きながらも、
ディレクターの仕事は続けていくという。

彼がフリーのディレクターを
一つのキャリアとして、続けていく理由。

そこには一歩目を踏み出したからこそ、
気付けた確信とつながりがある。

彼の軌跡を伝えよう。

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器用

実は、彼がフリーディレクターになったのは、
わずか1年前のこと。

専用のカメラも持っていない。
編集方法だって知らないし、経験だって皆無に等しい。

それでも、彼はフリーディレクターの世界に飛び込んだ。

「自分だけのプロフェッショナルを作りたい」
それが、フリーディレクターを始めた理由だという。

彼は幼い頃から何でも器用にこなせる人間だった。

彼の前職は飲食店の店舗マネージャーだ。
でも、その仕事は自らが望んだ仕事ではなかったという。

25歳で友人たちと起業して、
四ツ谷の三栄通りに飲食店を新規出店した。

その時、問題になったのは、
誰がそのお店のバーテンダーをやるかということ。

容姿が良くて、おしゃべり上手で、人当たりがいい。
そこに当てはまるのが彼だった。

もちろん、店舗マネージャーなんてやったこともない。
自分のやりたいことかと聞かれても、首をかしげていただろう。

でも、彼はそれでいいと思ったし、その仕事を引き受けた。

頼まれごとは、試されごと。
自分は器用だけど、これといった武器や特技はない。

自分に求めてくれることを精一杯やって、
それで周りが幸せになれるのなら。

そんな想いで店舗マネージャーという仕事を
一生懸命にやったという。

そして、結果は現れた。

持ち前の明るさと会話力で常連客を作り、
器用にスタッフとの関係をつなぐことで、
ゼロからスタートしたお店を軌道に乗せたという。

そして、27歳の時には、
2店舗目となるアパレルカフェを不動前に出店するまでになる。

地域密着がコンセプト。

前のお店以上に常連客作りに力を注いだし、
スタッフの教育もスカウトもやった。

周りのみんなが幸せになってほしい。
その思いだけで働き続けた。

そして、その結果、次第に常連客が増え始め、
安定して利益を生み出すお店となったという。

お店がうまくいくことで、自分の周りの人たちが笑顔になってくれる。
そのことが本当に嬉しかったし、それが自分の幸せだった。

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担当:おしゃべり

確立されたマネージャーとしてのキャリア。
順風満帆なワーキングライフ。

もちろん、自分もその仕事が楽しかったし、
信頼できる仲間もいた。

しかし、ある日のことだ。
彼はその飲食店のマネージャーを一切辞める決意をするのだ。

自分は何者なのだろうか。
そんなふとした違和感が積み重なった結果だった。

ある日の自分のお店のスタッフ同士のミーティング。
そこでは、シェフとバーテンダーが何やら議論をしていたという。

こんな味がいいんじゃないか、こんなお酒がいいんじゃないか。
こういう料理をお客様は求めているのではないか。

それはお店を良くしていく上での建設的な議論だった。

自分は店舗のマネージャー。
自分には彼らほどの専門知識はないだろう。

でも、自分だってマネージャーをやりながら、バーテンダーもやっている。
だから、料理の味やお酒のことなら少しはわかる。

しかし、自分の意見を伝えた時だった。
その専門家たちの空気が少し変わるのを感じた。

邪険に扱われることはない。

でも、彼らが何を言おうとしているのか、
人付き合いが得意な自分だから雰囲気で伝わってきた。

『お前は専門家じゃないだろう』

その瞬間にさまざまなことが、脳裏を駆け巡った。

幼い頃からスポーツだって、勉強だって、
人付き合いだって器用にこなせた。

でも、言ってしまえば自分にはこれといった武器がない。

今までお店に訪れた20代の多くの人たち。
俺はこれをやりたいんだ、私はこれを極めたいんだ。

自分だけの特徴や武器、キャリアを追い求めるその姿は、
いつでもキラキラして見えて、本当にうらやましかった。

自分が今までマネージャーとしてやってきたのは、
そんなプロフェッショナルな人たちを集めること。

みんなが自分の専門分野を存分に発揮して、
お客様もスタッフもお店も、みんなが幸せになる環境を作りたかった。

ふと、お店に貼られたスタッフボードに目をやる。

自分で書いた自己紹介欄。
「担当:おしゃべり」

みんなが専門分野を持ち寄り、
自分自身を担保にして責任を取っている。

じゃあ、自分は?

自分は何者なのか。
自分には何があるというのか。

自分は本当にこのままでいいのだろうか。

彼の苦悩は、静かに、
そして確かに積み重なっていった。

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自分だけのプロフェッショナル

自分がこれからどうしていくべきか。

そんな悩みを抱えている時だった。
彼に人生を左右する転機が訪れることになる。

それは、仕事中の出来事ではない。
記録係として呼ばれて参加した知人の結婚式。

彼はカメラ片手に自分の思うように
写真や映像を撮影していたという。

そして、式場には同じように撮影を行う集団がいた。
式場から依頼を受けたプロのカメラチームだ。

自分の視線が自然と彼らに向いているのがわかった。

スタイリッシュでファインダーを覗く姿は真剣そのもの。

一瞬たりとも撮影チャンスを逃さないその緊迫した空気は、
側で見ていた自分にまで伝わってきた。

そして、最後に流れたのは、彼らが作り上げた撮って出しムービー。
結婚式の様子を当日撮影し、エンドロールに流すというもの。

その映像を見た瞬間、衝撃が身体中に走るのを感じた。

結婚式と披露宴は4時間程度。
その中では、楽しい場面もあれば、感動する場面もある。

しかし、その瞬間の表情は、その時だけのもの。

重要な瞬間を逃さず確実に撮影し、
そして、限られた時間で構成編集する。

結果、笑顔と涙が交互に巻き起こり、
最終的にはみんなが幸せな気持ちになる。

最高だ。
自分の心が動くのを感じた。

自分だけのプロフェッショナルを作りたい。
極めるなら、この道だ。

成功していた店舗マネージャーという仕事。
その一切を辞めて、彼はカメラの道に飛び込む決意をする。

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知識ゼロのカメラマン

専用のカメラもなければ、動画編集方法なんて全然知らない。
知識ゼロで、彼はカメラの世界に飛び込んだ。

写真や映像の出来栄えに、おしゃべりのうまい下手は関係ない。

店舗マネージャー時代は、自分の会話で相手がすぐに
楽しんでいるかどうかがわかった。

でも、作り上げた映像の良し悪しは、
みんなに披露する瞬間に現れる。

綺麗な映像ならみんなが笑顔になり、
魅力ないものならみんながソッポを向いた。

そこに写る全てには、純粋に自分だけのスキルが反映される。

そのことが本当に面白かった。

だからこそ、必死に勉強したし、
撮影依頼に対しては、真剣に取り組んだ。

一生懸命作った動画が誰にも見られずに、
人知れず泣いたこともある。

でも、自分だけのプロフェッショナルを作りたい。
そのことでいっぱいだった。

そして、彼の努力はついに実を結ぶ。

知人の会社のプロモーション動画や写真素材の提供、
そして、きっかけとなった結婚式の撮って出しムービーの作成。

それらの仕事を通して、信頼を得られるようになり、
安定した収入を得ることができるようになるのだ。

自分は何者なのか?
その悩んだ答えが今ここにある。

自分だけのプロフェッショナルが人から求められること。
やっぱりそれは最高の気分だった。

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求められる人材になる

しかし、彼の物語はここで終わりではなかった。
彼にまた新たな道が開かれることになるのだ。

うちの会社のマーケティングをやらないか?

それは、フリーのディレクターとして、
歩み始めて1年が経つ頃のことだった。

動画撮影や編集の仕事など、定期的に依頼をくださっていた知人の社長。

その人物が新しい会社を今後進めていくにあたり、
各事業のマネジメントとマーケティングを行う人材が必要となる。

そこに自分を採用しようと考えているとの話だった。

え? と思った。

この一年間、自分だけのプロフェッショナルを作りたくて必死だった。
でも、その先には結局、マネジメントというキャリアが待ち構えていた。

あぁ、そうか。

新たなことに挑戦した今だからこそ、
妙にそのことに納得している自分がいた。

これが自分なんだ。

頼まれごとは試されごと。
相手は、自分だから依頼をしてくれる。

自分だけのプロフェッショナルで依頼を受けることは嬉しい。
けど、その前提には自分という人間を信頼しているのだ。

周りが自分に求めるのは、マネジメント。
そこにも自分のプロフェッショナルがあるのかもしれない。

ディレクターも、マーケティングも一生懸命にやって、
それで周りがハッピーになってくれるなら、最高だ。

それこそが、きっと自分だけのプロフェッショナルだ。

自分が何者なのか?
それに悩むことはもうないだろう。

自分にはディレクターというキャリアがある。
そして、マーケティングというキャリアがある。

安藤恭輔。
彼のキャリアは、マーケッターとフリーディレクター。

大きく異なる2つのキャリア。

だからそこには、
彼だけの答えと確信がある。

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この記事を書いた人

宮本 伸男
宮本 伸男ライターであり総監督でもある
人狼が大好きです。
ゲームマスターならお任せください。

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