小沢美紀 – TRIGGER

小沢美紀

職業は管理栄養士。病院や老人ホームで毎日献立を作ることもあれば、
調理もデスクワークもこなす職場のエース。彼女の才能。それは今を好きに変えていけること。

自分次第

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管理栄養士

彼女の職業、管理栄養士。
それは、食事を栄養の観点から管理し、食事指導を行う仕事。

業界や会社ごとに管理栄養士の職務範囲は異なるが、
彼女の今の仕事は、主に病院や老人ホームの献立作りだ。

食材費や栄養価の計算を行うこともあれば、
厨房に入り、実際に調理をすることもある。

献立作りでは味はもちろん、見た目も美味しそうな食事提供を
心がけているという。

自分の提供する料理が、誰かの喜びに変わっていく。
そのことがたまらなく嬉しい。

だから、彼女はこの仕事に最大限の誇りを持っているのだ。

そして、そんな彼女にはモチベーションを保つ秘訣がある。

それが今の職場環境だ。

後輩が増えてきて、様々なことを任せてもらえる環境。
自分の頑張りが評価される職場の雰囲気。

4月からは主任を任され、責任感を持って仕事に取り組めているという。
多くの人が憧れるワーキングライフだ。

しかし、初めからこの環境を手にしていたわけではない。

辛くて何度も泣いたこともある。
仕事の意味なんて全く考えもしなかった日々もある。

だけど、そんな経験があるから今がある。

自分次第。

彼女は今の状況を自分自身の力で作り上げてきた。

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泣きながら笑っていた

彼女が管理栄養士になろうと決めたのは、
高校生の時だった。

きっかけは、ふと目にした自身の卒業文集だ。

幼稚園、小学校、中学校とその全ての夢が
コックさん、ケーキ屋さん、料理を作る人。

自分でも意外すぎるほど全てが食に関することだった。

特に、その時にやりたいこともなかった。
だから、幼少期からの夢に純粋になることを決めたという。

大学を卒業し、管理栄養士の国家資格を取得。
そうして、就職したのは学校給食の現場だった。

しかし、彼女は夢とのギャップに衝撃を受けることになる。

発端は入社1年目の12月に行われた異動。
彼女が新たな配属先は、給食工場だった。

目の前には延々と続くかのようなベルトコンベア。
そこに載せられて運ばれてくる2000個以上の弁当箱。

白い作業着を着用し、目の前に流れてくるお弁当に
淡々と食材を詰める日々。

さらに、頻繁にトラブルが発生し、その対応で
毎日12時間以上の労働は当たり前。

それだけでも気分が滅入りそうになるのに、
追い討ちをかけたのは新たな工場長だった。

毎日のように怒鳴り散らす工場長。

お前なんかいらねぇよ!
早くやめろよ!
お前は一番最悪の栄養士だ!

彼女はどんどん自信を喪失していき、
そして、精神的にもおかしくなっていったという。

気づけば泣きながら笑っていた。

もう心身ともに疲れた。

仕事ができるようになりたかった。
自分が誰かの役に立ちたかった。

でも、私はいらない人間なんだ。

そして、食べることが大好きでこの仕事に就いたのに、
ついには、ストレスでご飯さえも食べられなくなる。

もうこの職場で仕事を続けることはできなかった。

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転職

仕事を辞めた彼女は、次の職場に悩んだという。

自分が管理栄養士を続けることに意味があるのだろうか。

幼少期の夢を叶えた先にあったのは、
自分が社会にとって必要のない存在だったということ。

怒鳴られる日々で、完全喪失した自信。
仕事ができるようになりたかったのに、
うまくいかなかった現実。

しかし、そんな彼女に方向性を示したのは、
誰かのアドバイスでもなんでもない。

ふと思い返した自分自身の過去だった。

小学生の時に、初めて家族に提供した手料理。
家族のみんなが美味しいと言って喜んでくれていた。

答えは自分が知っていた。
追い求めたい感情は、その時の幸せだ。

そうして、彼女は管理栄養士として再就職を決意する。

もっと誰かの役に立ちたい。
喜ぶ顔が見たい。

純粋に夢と向き合うことに決めた瞬間だった。

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自分が変わろう

彼女が転職先に選んだのは、
主に病院や老人ホームに食事を提供する職場だった。

自分のやった分だけきちんと評価されるという
その評価制度に惹かれて選んだという。

新たな職場は、前職のベルトコンベアと比べれば、
実に健全な職場だったという。

怒鳴り散らす上司もいないし、
白い作業着を着て、淡々と料理を詰め込むこともない。

彼女からしてみれば最高の環境だった。

しかし、その職場の雰囲気は最悪だったという。

課長が大量の仕事を抱え込む。
仕事が追いつかず、疲弊する姿は前の職場の自分と重なった。

さらに、働いている周りのメンバーを見れば、
恵まれた環境にも関わらず、常に不平不満を口にする。

彼女はそんな様子を見て、憤りを感じるばかりだった。

何もしないで文句ばかり。
それはまさしく今までの自分だったのだ。

だから、なおさらわかる。
言っても人は簡単には変わらないことを。

まずは自分が変わろう。

そうして、彼女は積極的な職場改善に乗り出した。

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自分次第

職場の改善。
しかし、何も大きなことを始めたわけではない。

食中毒に関するルールの取り決めを作ったり、
みんながわかりやすい色付きのテープで整理整頓をしたり。

不平不満を言う代わりに、自分ができることから
少しずつ基本ルールを提案していった。

大幅な人事異動も彼女の行動を後押しした。

転職当初のメンバーは総入れ替えとなり、
彼女の声はより届きやすくなる。

そうして、彼女が周りを見渡した時、
自分の望んだ環境に徐々に変わっていることに気づいた。

みんなの仕事は明らかに効率化され、
職場で聞こえていた不平不満も少なくなっていた。

任される仕事も増え、後輩や上司からの
信頼も得ることができていた。

昔のような怠惰な毎日はそこにはない。

自分のやったことは確かに誰かの役に立ち、
それが確かな自信につながる。

幼少期の夢に純粋になると決めたこと。
自分が変わる決意をしたこと。
できることから始めたこと。

それは全て彼女自身の選択だった。

自分次第。

だから、それが彼女の信条だ。

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この記事を書いた人

宮本 伸男
宮本 伸男ライターであり総監督でもある
人狼が大好きです。
ゲームマスターならお任せください。

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